Karma

「喰喰はどんな願いでも叶えてくれる代わりに、その願いに相当するだけの不幸を背負わせていく」


響介の背中に向かい、私が言う。


響介と私は、西校舎の美術室の隣にある空き教室にいた。


そこは異様な空間だった。


窓は全て内側から段ボールで塞がれているうえに、黒いカーテンがかかっており、中はとても暗い。


電気をつけても、壊れているのか、中央のひとつしかつかない。


「不幸を背負うリスクを負って願いを叶えるかは、契約者が選択できる。この契約を、血の契約という。契約が成立すると、契約した過程の記憶は全て消去される。もちろん、どんな不幸を背負ったのかも本人は忘れてしまう。だけどその代わり、契約が成立したことを示す印が体に残る」


私が言うと、響介は一瞬だけこちらを向き「よく調べたね」と呟く。


この数ヶ月。私は受験勉強ばかりしていたわけじゃない。


凪瀬高校の生徒に接触し、できる限り喰喰の情報を調べた。


「でも分からない。喰喰を呼び出す“儀式”を知るものがいなかった」
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