諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「よろしく。静菜さん」

 そう言う男の子は、緩やかに口角を上げて微笑む。

 私は、頬がじんわりと熱を持つのがわかった。

 白い肌に、意志の強そうな大きなアーモンド型の瞳。パーマがかった艶やかな黒髪が、ふわりと揺れている。

 見た感じ、私より、二、三個くらい年上かな。それほど年齢も変わらなく見えるのに、なんて大人びた表情をするのだろう。

 私は、彼を一目見た瞬間から目を奪われていた。

 この人が、私の婚約者になる人?

 再び瞬きすら忘れて見入っていた私の頭を、母が強引に下げさせる。「わっ」とこの場にそぐわない声が漏れた。

 しまった。

 私はおずおずと見上げる。男の子は小さく笑っていた。

 胸がぎゅっと締め付けられる。喜ばしい驚きに、唇も微かに震えていた。
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