諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
予期せぬ攻防
「それは進展したねぇ。吾妻さん公認で土俵に立ったんだし、あとは時間の問題じゃないの?」

 そう言い終えた美鶴は、先ほど運ばれてきたばかりのピザを一枚手に取り、伸びるトロトロのチーズに「おぉ」と弾んだ声を出した。

「そんなすぐには上手くはいかないと思う。十五年もあったのに、手を繋いだのもほんの最近なんだもん。あれだって理人さんにとっては子供の手を引くようなものだったんだろうし……」

 思わず弱りきった表情を浮かべる私は、取り分けたカルボナーラをくるくるとフォークに巻きつける。

 ――理人さんのマンションに行ってから数日後。私たちは美鶴が行きたいと言っていた、会社の近くに新しくできたイタリアンのお店でランチをしていた。

 オレンジとブルーの鮮やかなタイルの床に、家具はすべて木製の白で統一されている可愛らしい店内は、できたばかりということも相まってか、休憩中のOLらしき人たちで満席だった。
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