嘘恋のち真実愛
またもや勝手に部長のお金事情を考えて、首を横に振る。失礼なことを考えてはいけない……自分で自分を叱責した。


翌日、部長に私と鈴川(すずかわ)くんが呼ばれる。鈴川くんは、隣のデスクに座っている私の一年後輩社員だ。

彼はちょっとのんびりしたところがあるけど、勘が冴えている。

鈴川くんとノートパソコンを抱えて、ミーティングルームに入る。部長は先に入っていて、向かい側に座るよう指示した。


「夏のイベントのことだけど」

「はい」


返事をしながら、鈴川くんと顔を見合わせて笑う。鈴川くんが『夏のイベントのことでしょう』と予想していて、当たったからだ。

鈴川くんはこのイベントチームの一員であるが、私はチームに入っていない。だから、それとは違う案件だろうと思った。でも、何の件で呼ばれたのか全然予想は出来なかったけれど。

部長は笑い合う私たちを不思議そうに見る。


「なにかあった?」

「いえ、特には……」


特に話すことではない。しかし、部長はその返事が不満だったのか、顔をしかめた。鈴川くんは不機嫌顔の部長を気にすることなく、ゆったりとした口調で聞く。
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