嘘恋のち真実愛
「はっ? 結婚?」

「うん、結婚。イヤだ?」

「イヤではないけど……急に言われても、頭が付いていかないというか……なんで、いきなり言うんですか?」


征巳さんが壊れたかのように紡いだ言葉は、まさかのプロポーズになっていた。用意していたプロポーズではないだろう。

だから、簡単に言ってしまっていいのかと思った。

「なんでって」と彼は、視線を泳がせたあと、熱のこもった瞳をこちらに向ける。

心臓の動きがとんでもないくらい速くなり、苦しさを感じる。倒れないようにしないと……。


「ゆりかの心も体も欲しいからだよ」


なんて、破壊力のある言葉だ。こんなに強く求められたことはない……ふらりと体が揺れる。

征巳さんはすかさず接近して、私の体を支えた。彼の腕の中で、消え入りそうな声を出す。


「すみません……」

「いや、大丈夫?」

「はい」

「返事聞かせて。もう我慢の限界だから」


そっと彼を見上げた。彼の瞳を見ながら、告げる。


「私も征巳さんが欲しい」


伝えた瞬間、ぐいっと体を密着させられた。
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