嘘恋のち真実愛
「そのクッキー、おいしい?」

「はい。やはり北海道のというだけあって、味が違いますね」

「それは、良かった。みんなが喜んでくれるといいねと、芦田さんと選んだんだよ」

「えっ、芦田さんと?」


ああ……征巳さんったら、言ってしまった。穴があったら、隠れたい。

鈴川くんは、征巳さんの口から飛び出した私の名前に驚きながら、私を見た。征巳さんは平然とした顔で「うん」と返す。


「驚いたんですけど、ふたりはお付き合いされているんですか?」

「うん、結婚する予定でね」

「は? 結婚?」


結婚というパワーワードに鈴川くん以外の周囲で聞いていた人からも「ええー!」と驚きの声があがり、フロア全体に響いた。

「部長と芦田さんが?」「いつの間に?」「ビックリ」と様々な声が飛び交い、ざわめく。

注目されるのが、恥ずかしい。今すぐ逃げたい……。けれど、征巳さんにガシッと肩を抱かれしまった。

まだクッキーが入った箱を持った状態の私は、身動きが取れなくなる。彼は、驚く人たちの顔を見て、うれしそうにしていた。

そんな騒ぎの中で、鈴川くんは呆然と立ち尽くす。
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