嘘恋のち真実愛
エントランスに入ると、コンシェルジュの前田さんという女性が急ぎ足で近寄ってきた。焦った様子の前田さんは「申し訳ありません」と小声で言う。

どうして謝るのだろう?
何事?


「どうされましたか?」

「あの、実は……」

「征巳さん!」


前田さんが言いづらそうにしていると、ロビーに座っていた人が立ち上がって、征巳さんを呼んだ。

あの人はたしか……征巳さんが目を見開いて「未央子ちゃん」とその人の名を口にする。そうだ、未央子さんという人で、以前征巳さんと食事をしていた人だ。

あの時は、征巳さんに彼女役を頼まれた私がふたりの間に乱入した。

だから、今度は逆?……じゃなくて、何のためにここに?


「本当にその人と結婚するの?」


未央子さんは鬼気迫る表情で、私を指差す。一瞬背筋が寒くなった。


「今日、婚姻届を提出して無事受理されたよ」

「えっ? もう結婚したの? 式はしていないよね?」

「式はあとでする。早くに彼女と夫婦になりたかったから、まず入籍を済ませた」

「そんな……」
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