嘘恋のち真実愛
私はもがくのをやめた。言われてみれば、執着心が強そうな人だった。まだロビーにいて、私の姿を見たら……ここまでしたことが無駄になる。

もう少し時間を置いてから帰ったほうがいいかも。


「では、あと一時間くらいここにいます。あまり遅くなりたくはないので」

「うん、そうしてもらえると助かる。なにか飲む? ご飯は食べた?」


私が出ていかないことに安心した部長は、私から離れてルームサービスメニューを手に取った。


「喉は乾いていますが、ミネラルウォーターでいいです。ご飯は食べました」

「そうか。じゃあ、これ」

「ありがとうございます」


窓際にあるテーブルの上にサービスなのかペットボトルが二本置いてあった。一本を私に渡し、もう一本の蓋を開けて、部長は飲む。

彼も喉が乾いていたようだ。私も同じように喉を潤した。

それにしても、あと一時間ここでなにをしたらいいのだろうか。

居心地の悪さに窓まで行って、外を眺めた。


「なにか見える?」

「スカイツリーが見えます」

「ああ、うちのマンションからも見えるけど、芦田さんちからは見えない?」
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