嘘恋のち真実愛
朝から心臓に悪いことばかりの連続だ。このままでは業務に支障がでかねない。高鳴る鼓動を静めようと胸に手を当てて、小さく息を吐く。


「ゆりか、先に行ってて。俺は、心を落ち着かせてから行く」

「えっ?」


一緒に営業部のある階でエレベーターを降りたのに、私の背中を軽く押してから征巳さんはまたエレベーターに乗る。

唖然とする私を置いて、征巳さんを乗せたエレベーターは上昇していった。彼はどこまで行ったのだろう。

落ち着かないのは私もなのに……。

残された私は、どこに向かったかわからない人を追うことを諦めて、熱いコーヒーを飲みながら気持ちを落ち着かせる。

パソコンのメールボックスを開いて、私は動きを止めた。

えっ、征巳さん、どこ?

征巳さんのデスクを見るが、まだ在席していない。彼からの社内メールは一分前に届いていた。

どこで作業しているのだろう?
こちらには、いつ来るのだろう?

いくつものの疑問を浮かべながら、『重要事項』という件名のメールに目を開く。そこで、新たな疑問がわいた。

これは、いつ考えて、いつ作ったのだろう?
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