偽りの愛で、永遠の愛を誓います
「琴葉」

「なんですか?」

「お前は、大里家の嫁になるのが嫌か?」

「嫌…というか、自分に自信がありませんし、蒼弥さんのこともよく知りません」

私がそう答えると、納得したような表情を浮かべ、書斎に戻って行った。

蒼弥さんのことが嫌いな訳じゃない。

だけど、何度も言うように結婚だけは出来ない。

「蒼弥さん、お風呂湧きましたよ」

「あぁ、今行く」

そう声をかけ、リビングに戻る。

社長というだけあって、普通の家庭よりは広めの家だ。

リビングの真ん中に置かれたソファーに座り、ぼーっと今日のことを振り返る。

「結婚、しないとダメなのかなぁ…」

でも、蒼弥さんの名前と、社長さんであることしか知らないし。

「琴葉、先にお風呂入ったよ。ありがとう」

「あ、うん」

「ミネラルウォーターとかある?」

「今用意するね」

冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだし、コップに注ぐ。

蒼弥さんが私のことを見ているのに気がついていたが、敢えて気が付かないフリをした。

「お待たせしました」

「あぁ、悪いな」

普段はいい人なんだけどなぁ。

そんなことをぼんやりと考えながら、私はお風呂に向かう。

どうしたら結婚をキッパリ断れるのか考えながら入っていると、だんだん頭がボーッとしてきた。

のぼせてきたかも、なんて思い立ち上がると、目眩がした。

「きゃっ」

そこから、私は何も記憶にない。
< 6 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop