偽りの愛で、永遠の愛を誓います
「ただいま」

メールを読んで感動していると、蒼弥さんの声が聞こえた。

私は急いで玄関に向かい、お出迎えをする。

「おかえりなさい」

「今日の夕飯何?」

「今日は肉じゃがにしようと思ってます」

「作れんの?」

「作れないもの選びませんよ」

「じゃあ、夕飯出来たら呼んで」

そう言って、蒼弥さんは書斎にこもってしまった。

社長さんだし、お仕事は山のようにあるんだろうな。

そんなことを考えながら肉じゃがを作り、ご飯が出来たことを知らせに書斎に向かう。

「蒼弥さん、夕飯出来ましたよ」

声をかけるが、中から返事はない。

私は失礼します、と言って書斎のドアを開けた。

ゆっくりとドアを開けると、蒼弥さんはパソコンを立ち上げたまま眠っていた。

綺麗な寝顔に、思わず見とれる。

「んん…」

「蒼弥さん、夕飯出来ましたよ」

「今行く…」

すごく疲れていたみたいだし、起こしてしまって申し訳ないなと思った。

肉じゃがをお皿に盛り付けていると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。

「そ、蒼弥さん…?」

「琴葉…俺、遊びじゃなくて本気で琴葉が好きなんだ…」

私の耳元でそう呟く蒼弥さんは、どこか可愛く見えた。

でも、結婚は出来ない。

結婚願望がない訳じゃないけど、蒼弥さんと結婚するのは無理だ。

「返事はいらないから、考えといて」

「うん…わかった…」

「じゃあ、これ運んでいい?」

「お願いします」

お皿に盛り付けた料理を運んでもらって、私たちは食卓についた。

「いただきます」

「いただきます」

蒼弥さんの挨拶の後に続き、私もきちんといただきますをする。

いつも意識していた訳ではないが、蒼弥さんが当たり前のように手を合わせていただきますをするので、やはり礼儀正しいんだなと思った。

「そういえば、うちの両親が琴葉に合いたいと言っていた」

「でも、結婚するって決めたわけではないですし…」

「先日も言ったが、この結婚は約束されているんだ」

「でも、私の意思はどうなるんですか?」

「じゃあ、形だけの結婚でいい」

「どういう意味ですか?」

「入籍と結婚式はするが、夫婦らしいことは何もしない」

「蒼弥さんはこれでいいんですか?」

「仕方ないだろう、両家が決めたことなんだから」

「私は、そんなの認めません」

そう言って残りをパパッと食べて、食器をさげた。

蒼弥さんは何か言いたそうだったが、気が付かないフリをした。

もう決まってしまったことだと頭ではわかっている。

でも、それを受け入れてしまったらダメな気がした。

「ごちそうさま、美味しかったよ」

「…いえ」

短く返事をして洗い物をする。
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