忘却ラブシック ~あまのじゃくな君には騙されません~
「っふぇ?!」
軽く腕を引かれた途端、足が縺れてベットに倒れ込む。その拍子で視界一杯に広がる――とても端正な容貌の青年。
透き通った鳶色の瞳。すっと通った鼻筋、彫刻のように美しい輪郭。全てのパーツがあらゆる世の女性を虜にしそうな美麗さで、癖のある栗色の髪は、甘い顔立ちを際立たせていた。
程良く着崩した制服から見えるしなやかな胸筋は妖艶さを孕んでおり、ただ漏れの色香が無条件に人を惹き付ける。
そんな容貌を持つ彼に片手を掴んだままやんわり覆い被されて、一瞬頭が真っ白になる。
黄昏の光が作り出した、長い睫毛の影。
伏し目がちだった瞳が、ゆっくりと私を見た。
愉快そうに細められた目からは、何の感情も読み取れない。不遜に弧を描く唇が、最初に抱いた柔和な印象を嘲笑しているようだった。