忘却ラブシック ~あまのじゃくな君には騙されません~


 血が足りないなぁ。
 朧気(おぼろげ)にそう思った時には、もう遅かった。

 人間の意識が刈り取られる瞬間と言うのは、周りからすると幽霊に遭遇した時と同じくらい、相当驚くシチュエーションらしい。まるで電池の切れたロボットみたいだ、と。

 生まれてこの方、プツリと意識が途切れまくる体質の私。当然、倒れた後の現場なんか自分では見た事がない。

 なので、後から滾滾(こんこん)と説教混じりに当時の様子を聞かされる話に実感が(ともな)わないのは、無理もないと思う。

 だから多分、今回もさぞ見事な倒れ方だったのだろう――意識がはっきりして来る中、どう足掻いても戻れない過去を(かえり)みながら嘆くしかなかった私は、ほとほと自分に呆れた。

「ううぅ……やっちゃった。これ、絶対に怒られるよ……」

 四月。麗らかな春の日差し――どころか、外を一瞥(いちべつ)すればもうとっくに夕暮れ時だった。



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