俺から逃げられると思うなよ
「茜」



リビングから私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

返事をしながらリビングへ行く。



「神埼くん、どうしたの?」



その質問には答えない神崎くん。



「ここ、座って」

「え?」



神崎くんが示す、“ここ”とは、太ももの上。


ソファに座っている神崎くんの上に乗れと?

私が?

なんで?


神崎くんの言葉に戸惑っているのは、私だけじゃないようだ。

涼はゲームをしていた手を止めているし、千秋くんは口をぽかーんとあけている。


……オムライス、作りにキッチンへ戻ろう。


そう思って神崎くんに背中を向けた瞬間。



「わっ!」



腰に腕が巻きついた、と思った瞬間、後ろに引かれる。


バランス崩した!


と、思ったときには神崎くんのひざの上。

神崎くんの言う、“ここ”に座ってしまいました。


そのまま、後ろからぎゅっと抱きしめられる。



「か、かか神崎くん!?」



神崎くんの行動に驚いているのは2人も同じなようで。

涼は手に持っていたゲームをじゅうたんの上に落とす。

千秋くんは、くりくりの目を見開いている。
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