凌玖先輩から逃れられない
「完璧な生徒会長の彼女が平凡な人だって……釣り合わねえよ」
耐えろ。耐えるんだ。
怒り、悲しみ、そのふたつで片づけられない何かがわたしを支配する。
「倉橋と生徒会長は正反対すぎる。いつか一緒にいるのが辛くなるに決まってる」
……っ。
ああ、もうダメだ……。
「そうなるくらいなら──俺が」
涙で視界がぼやけたその時、
横から伸びた手がわたしの瞳を覆い隠した。
「沙耶。下心を持つような奴に耳なんか貸さなくていい」
「……っ」
「遅くなってごめん。もう大丈夫だ」
至近距離にある先輩の爽やかな匂い。
先輩の言葉でひどく安心して、涙腺がさらに緩まってしまう。