【短】きみとかえるのおしまい



ひとりぼっちになった室内にようやっと胸をなでおろし、本棚のところまで踏み入れた。ひと息着く。


スカートのポッケがうごめくのを感じた。

バイブにしてたスマホに新着メッセージ。



『エル〜どこまで行ってるの?待ちくたびれた〜』

『エルナ。早くしないと置いてくぞ』



同じタイミング。ちがう呼び方。


もうやだ。何これ。

既読スルーしたい。


本当に全部ぶちまけたら楽になれるのかな。



『ごめん。時間かかりそうだから先に帰ってて?』



どうしてわたしが謝らなきゃいけないの。



「はーあ、きもちわる……」



やるせなくなってその場にうずくまる。


告白の残り香がただよってるようで身の毛がよだつ。



とりあえず胃の中をきれいさっぱり丸洗いしたい。

あの、ペットボトルの、苦いお茶が飲みたい。



少しでも気をまぎらわしたくて、テキトーに手に取った古い本を開いた。


呪いのかかった王子様とお姫様の
ハッピーエンドのおとぎ話。


どこかなつかしい匂いに浸っていた。


< 4 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop