【短】きみとかえるのおしまい
ひとりぼっちになった室内にようやっと胸をなでおろし、本棚のところまで踏み入れた。ひと息着く。
スカートのポッケがうごめくのを感じた。
バイブにしてたスマホに新着メッセージ。
『エル〜どこまで行ってるの?待ちくたびれた〜』
『エルナ。早くしないと置いてくぞ』
同じタイミング。ちがう呼び方。
もうやだ。何これ。
既読スルーしたい。
本当に全部ぶちまけたら楽になれるのかな。
『ごめん。時間かかりそうだから先に帰ってて?』
どうしてわたしが謝らなきゃいけないの。
「はーあ、きもちわる……」
やるせなくなってその場にうずくまる。
告白の残り香がただよってるようで身の毛がよだつ。
とりあえず胃の中をきれいさっぱり丸洗いしたい。
あの、ペットボトルの、苦いお茶が飲みたい。
少しでも気をまぎらわしたくて、テキトーに手に取った古い本を開いた。
呪いのかかった王子様とお姫様の
ハッピーエンドのおとぎ話。
どこかなつかしい匂いに浸っていた。