アテナ・イェーガー〜ダンス、のちにキス〜
「ああ。きっと、素敵な日になるんだろうな……」

そう言った表情には、寂しさが見えた。ロネはアテナの手を優しく握る。アイスを食べたからか、その手は冷たくなっていた。

本来ならアテナも生まれてからお祭りに参加して、楽しむはずだったのだ。メルガの娘というだけで楽しいことも制限され続けなければならない。ロネはおかしいと思うことをやめられない。

「アテナのダンス、すごく綺麗だよ。だからきっとみんなアテナに注目すると思う」

ロネがそう言うと、アテナは「私なんかが注目を浴びていいのだろうか。私に浴びせられるのは暴言と蔑む目だけじゃ……」と不安げに言う。ロネは首を横に振った。

「アテナは悪いことはしていない。だから、胸を張って生きていいんだよ」

ロネが真剣な目でそう言うと、アテナは顔を背けてしまう。しかし、ロネの手を強く握り返してくれた。

「……ありがとう」

小さな声だったが、ロネの耳にはっきりと届いた。アテナの耳は赤く染まっていて、ロネも照れてしまう。
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