インスピレーションを信じて
15

きちんとスーツを着て ネクタイを締めて。

緊張した顔で 車を運転する務。


「だから 大丈夫だって。務のこと ちゃんと話してあるし。」

私は クスッと笑って 務を見ると

「レーナは すごく上手に 挨拶できたけど。俺 口下手だから。お義父さんに 嫌われたら どうしよう。」

「嫌うわけないよ。私の顔を見れば わかるもん。」

「えっ? 何が?」

「私が 務に 幸せにしてもらっているって。」

「ほらね。レーナは そうやって 口が上手いから。」

私は クスクスを通り越して ケラケラ笑ってしまう。


新年の高速道路は 混雑もしないで。

東京から 2時間弱で 私の家に着いた。


「はじめまして。牧田 務と申します。宜しくお願い致します。」

私の父に お辞儀をする務。

「そんなに 堅くならないで。って言っても 無理かな。」

父は 笑顔で 務に声を掛けた。



「礼奈さんと 結婚させて頂きます。一生 大切にします。」

簡単な 自己紹介と 世間話しの後で

務は 改まって 父に頭を下げた。


「出来の悪い娘ですが 可愛がってやって下さい。」

父も ニコッと笑って 務にお辞儀した。


私は 胸が熱くなってしまう。

2人の男性が 私のために 頭を下げている。


今まで 愛して育てた父

これから 愛して守っていく務


「やだ。礼奈が泣いているなんて。初めて見たわ。」

場違いな 母の声に 男性陣は驚き。


「もう。お母さん ヤダ。」

私は 泣き笑いに顔になってしまう。



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