俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
モヤと同じ紫のベールが出現し、魔族の体を包み込み、縛り上げて拘束する。
そして、そのベールもろとも、魔族の体がモヤの穴に吸い込まれるように、徐々に引き摺られていく。
強制的な誘導にジタバタ藻掻いて抵抗するコスプレ魔族だが、その必死さも空しく、力が及んでいない。
『穴』はもう、目の前。
《ああぁぁっ!…やめろおおぉぉっ!》
「急急如律令、閉門…『封印』!」
なずなの声と突き出した印に反応するかのように、モヤの吸引力は一気に増す。
抵抗するコスプレ魔族は、たちまち穴に吸い込まれていき、あっという間に姿を消していた。
モヤの中心は穴なのに、なぜかバーン!と扉を閉めるような音がして、紫のモヤと穴は一瞬で消え去る。
何もなかったかのように、フッと静寂さが訪れていた。
残ったのは…魔族の体内から出てきた、黒い羽根だけ。
床に細かく散らばっていた。
辺りは、いつの間にか元々いた倉庫内に姿を変えていて。
そこには、なずなと竜堂が立ち尽くしている。
俺の後ろには、依然として目を覚まさず寝転がっている美森の姿のみだった。