俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~

しかし、菩提さんは、躊躇うことなく自分の身の上話をしてくれる。



「母親は14歳で俺を生んだらしい。網走のヤンキーで、若気の至りで出来た子供らしくて。俺、公園の公衆便所で生まれて、すぐに施設に引き取られたんだって」

「え…そうなんですか」

「で、八歳の時、ちょっと事件に巻き込まれて…そこでなずなの父親と出会った」



そして、フッと笑っている。

昔を懐かしむような、笑顔。



「…あの人みたいな陰陽師になりたいって思ったんだ。…で、無理矢理札幌まで着いていって、あの人の家に居候したんだ。妊娠中のお腹の大きい妻がいたけど」

「…凄い行動力ですね」

「それからすぐに、陰陽師の総本山に入って12歳まで修行。卒業してからまたこっちに戻ってきて本格的に弟子入りしたんだ」

「またまた凄い行動力ですね」

「ふふっ。あの時は死に物狂いだったよ」



(………)



菩提さん…今。

不幸な生い立ちを話していたはずなのに。



「あの時は…幸せだったな」



『幸せだった』と過去形のはずなんだけど。

今も幸せそうに見えるのは、なぜか。



彼をボーッと見ていると、目が合う。

あっ…。


< 501 / 503 >

この作品をシェア

pagetop