千景くんは魔法使い
「あの、サッカーは辞めたんじゃ……」
私の見間違いじゃなければ、たしかに今真田くんは小さい子たちとボールを蹴り合っていた。
「辞めたよ。あれは弟の友達。たまに教えてくれって頼まれて付き合ってるだけだ」
ボールを追いかけていた真田くんは、とてもキラキラして見えた。この遠くの土手からでもわかるくらいに。
「あいつから昔のこととか、どこまで聞いてんの?」
真田くんはズボンのポケットに手を突っ込んで、ぶっきらぼうな言い方をした。
「……ジュニアチームの時に、千景くんがひとりよがりの行動をして、チームメイトとの関係も悪くなって、それでパスも回してもらえなくなったって……」
「そう、あれは次の大会に進むための大事な試合の時だった。みんな小野寺の勝手なプレーに付いていけなくなって、試合中にボイコットしたんだ」
おそらく千景くんに向いていた視線や空気は、相当冷たいものだったに違いない。
「実は俺と小野寺って、ああ見えてジュニアチーム時代はけっこう仲良くて、中学も高校もサッカーの強いところを選んで、いずれはテレビに出られるような選手になろうっていう同じ夢をもってやってたんだ」
真田くんはサッカーをしてる子供たちのことを見ていた。
おそらく年齢は10歳くらいだから、ちょうどふたりが同じ仲間としてコートにいた頃と重なる。
「でもあいつはチームに居場所がなくなって、あっさりとサッカーから離れやがった」
それはまるで、離れてほしくなかったみたいな言い方だった。
「……真田くんは、千景くんのことを許せないんじゃなかったの?」
「許せねーよ。でもあいつはサッカーを続けるべきだった。そのぐらい才能があったし、周りも認めてた」
「真田くんも?」
「ああ」