千景くんは魔法使い
勉強は明日の国語と数学をやることにした。
折り畳み式テーブルを挟んで、私たちは向かい合う。静かな空間で勉強するのは普通のことなのに、なんだか私は呼吸の仕方さえうまくできない。
「どうしたの?」
千景くんはすでに数学の方程式を解きはじめているのに、私はシャーペンを持ったまま一文字も書いていなかった。
「わ、私の……」
「うん」
「私の心臓の音、うるさくないかな?」
「え?」
千景くんが、きょとんとしてる。
今までもドキドキすることはあったけれど、今日は一段と私は平常心ではいられない。
「じゃあ、俺の心臓の音は花奈に聞こえてる?」
「う、ううん」
「じゃあ、問題ないよ。俺だって相当うるさいけど、これでも聞こえないんだからさ」
「……っ」
どうしよう。そんなこと言われたら……ますます心臓のコントロールが効かなくなる。