千景くんは魔法使い
「ちゃんと花奈のお母さんに連絡いれた?」
「うん。さっきしたよ。今日お父さんも仕事の飲み会でいないから、ひとりでドラマ見ながらゆっくりご飯食べるよって言ってた。あ、あと千景くんのお母さんによろしくだって」
「仲いいんだね、お母さんと」
そんなことを話してるうちに千景くんの家に着いていた。
この前はあまり確認しなかったけれど、千景くんの家は薄茶色に赤レンガの屋根が付いていて、オシャレな外観をしていた。
「お、お邪魔します」
まさか千景くんの家に上がる日がまた訪れるとは思ってもみなかった。
「あっ、手土産ないんだけど大丈夫かな?」
せめて駅前の美味しいシュークリームでも買ってきたらよかった。
「花奈はもてなされる側なんだから手土産なんていらないよ」
「え、でも……」
「今花奈が来てることをメッセージで送ったら、パート帰りに買い物して帰るって。花奈は和、洋、中でどれが一番好きなのか聞けってさ」
千景くんはそう言って、スマホに届いたお母さんからの文面を見せてくれた。
「なんでも好きだよ!」
「なんでもは逆に困るからダメ」
「う、うーん。中華、かな。辛いものとか実はけっこう好きなの」
「あ、俺も好き」
千景くんは中華が好きと言っただけなのに、その口から出てきた〝好き〟にきゅんっとしていた。
「返信しといた。じゃあ、勉強しようか」
勉強場所は、もちろん千景くんの部屋だ。
この前入ったことで免疫が付いていると思っていたのに、私は2回目でも千景くんの匂いがする部屋にドキドキしていた。