千景くんは魔法使い
「このままじゃなにも変わらないよ。臆病者だった私の背中を何度も押してくれたのは千景くんでしょ?千景くんも自分の気持ちに嘘はつかないでよ。サッカーだって本当はやりたいんじゃないの?」
「やりたくない」
「嘘だ」
「嘘じゃない。俺はもうサッカーはやらないって決めたんだ。だからもういいんだよ」
「千景くんの意地っ張り!ちゃんと自分の気持ちに正直になってよ。それで、過去を乗り越えようよ。私にできることがあればなんでもするから。だから真田くんと話し合って……」
「うるさい……!!」
ビリッと、鋭い閃光が私の頬を横切る。
痛さを感じて確認すると、自分の右頬が切れていた。
「……あ、」
千景くんの顔色がみるみる青くなっていた。
その体はまた淡く光っている。
チカチカと非常灯の緑色の明かりも壊れたように点滅してる。また千景くんの意思とは関係なく、魔法が発動したようだ。
「落ち着いて。私は大丈夫だから」
なだめながらも、切れた箇所から血が流れていた。
それを見た千景くんが、申し訳なさそうに後退りをしはじめる。
「花奈にケガさせるなんて……」
「平気だよ。こんなのケガじゃない」
「ごめん。本当に……ごめん」
千景くんはそのまま私から離れるように、どこかへ行ってしまった。