千景くんは魔法使い
千景くんの✫*゚★.*。✫まほう


セミの声があちらこちらで鳴いている8月。私は下ろし立ての新しい洋服を着て、サンダルの音を響かせていた。

待ち合わせである駅前の噴水の前には、千景くんの姿。すれ違う女の子たちがチラチラと千景くんのことを見てる。

……やっぱりカッコいいな。

私は電信柱を背に、カバンから手鏡を取り出した。

前髪よし。ニキビもない。女の子らしいフリルのついた服は桃ちゃんに選んでもらったから間違いないはず。


「千景くん」

最終チェックを終えたあと、私はやっと千景くんの前に出た。

私にメッセージを送ろうとしてくれていたのか、千景くんの視線がスマホから私へと向く。


「花奈」

優しい笑顔に、胸がきゅんっとなった。

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