千景くんは魔法使い


「すごいよ!時間を止められるなんて!」

私たちしか動いていない世界。ふたりだけの秘密の時間を共有してるみたいでワクワクする。

「ふっ、あはは」

なぜか千景くんが笑い始めた。


「花奈って、俺が最初に魔法を見せた時も同じことを言ったよね。魔法が使えるなんてすごい。まるで絵本の世界のことみたいだって」

まさか千景くんがそんなことを覚えていたなんて思わなかった。


「あの時から感じていたけど、俺は花奈にならなんでも話せる。だからもう嘘はつかない。自分の過去と向き合ってみるよ」

「うん……っ」

私たちは自然と水の中で手を握っていた。


「あと水着、可愛い」

「え……?」

「目のやり場に困るくらいに」

千景くんが照れたように言う。

こうして私の心を一瞬で鷲掴みにしてしまう千景くんことが、私はやっぱり大切で大好きだと思った。

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