千景くんは魔法使い
なによりも大切だったからこそ、壊してしまったという罪悪感も強かったのかもしれない。
すると、真田くんも後ろめたさがあるように、視線を下に向けた。
「……前にお前のせいでみんなサッカーを辞めたって話をしたけど、あれは嘘なんだ」
「……え?」
「チームがなくなっても、みんなすぐに新しいところを見つけて、今もたぶんどこかでボールを蹴ってると思う。ずっと過去に縛られて時間が止まったままなのは、俺たちだけだ」
真田くんだって、本当は新しいチームに入ることもできたのだと思う。
でも、しなかった。
自分だけ先には行けないと、今も千景くんのことを待ち続けている。
「お前は今、サッカーに対する気持ちはどうなんだよ。4年前のことと向き合って、俺に謝って、それで終わりか?」
真田くんの質問に、千景くんが黙る。けれど、迷いを捨てるようにして、千景くんの瞳が輝いた。
「俺はもう一度、サッカーをやりたいと思ってる」
今までずっと否定していたけれど、これが千景くんの本当の気持ちだ。
やっと、聞けた。
やっと、自分の心に正直になってくれた。
嬉しくて、じわりじわりと目頭が熱くなっていた。
「まずは一から始めるつもりでサッカー部に入ろうと思ってる。だから今日は真田に許してもらいにきたんだ」
「お前は本当に甘ちゃんだな。もう2年の夏だぞ。今、部活に入ったってレギュラー枠は固定されてるし、途中から入部したって煙たがれるだけだ」
「それでも俺は――」
「高校……」
「え?」
声を遮ってまで話はじめた真田くんの言葉に、千景くんは耳を傾けていた。