千景くんは魔法使い


そこには〝いらなくなったもの〟とマジックで書かれている。段ボールを開けると、私にとってほろ苦いものが出てきた。

「……懐かしいな」

それは、私が引っ込み思案になってしまったきっかけでもあるつばめの観察表だった。

5年振りに広げてみると、とても細かくつばめのことが記録されていて、今見返してもよくやっていたなと感心してしまうほどだった。

「ニャン?」

「ちっちはつばめ見たことないでしょ?うちによく巣を作りにきてたんだよ」

毎年欠かさずに戻ってきていたつばめは、いつの間にか来なくなった。

まるで私の気持ちが伝わってしまったかのように、つばめもうちに来にくくなってしまったのではないかと思っている。

この観察表のスピーチを失敗して以来、私の性格は変わってしまった。

自分でもどうにかしたいのに、どうにもならなかった。

――『俺は遠山さんが頑張り屋だってことを知ってるよ。もう少し自分のこと褒めてあげてもいいんじゃないの?』

でも、そんな私のことを千景くんは認めてくれた。

頑張ったから、そのぶん落ち込んだ。

適当にやっていたら、あそこまで沈むことはなかったと思う。

全部無駄になって、上手くできなかった自分を責めたけれど、今なら言える。


「大丈夫。小学3年の私は頑張ったよ」

失敗したかもしれないけれど、手を抜かずに自由研究をやった自分のことをたくさん褒めてあげたい。

「ニャン!」

ちっちが私に知らせるように、クッションの上で鳴いていた。そこにあるスマホにはメッセージの通知を知らせるランプが光っていた。



【今、なにしてる?】

それは千景くんからのメッセージだった。


< 136 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop