千景くんは魔法使い
「前にした約束、覚えてない?」
「約束?」
「俺と夜のデートをしませんか?」
千景くんはエスコートするように、手を伸ばしてきた。
「はい、します!」
私は迷わずに、その手を取る。
体をあっという間に引き寄せられて、私も木の上にいた。
「しっかり掴まってね」
そう言って、千景くんは私の腰に手を回す。そのまま勢いよくジャンプすると、私たちの体は宙に浮いていた。
「わ……っ」
肺に入る空気が地上よりも冷たく感じる。
一瞬にして家が遠くなり、電線よりも高い場所にいた。
「す、すごい。私たち空を飛んでるよ!」
現実のことではないように思えるけれど、これは夢でもなんでもない。
「怖くない?」
「全然!楽しいし、嬉しいよ!」
千景くんは民家の屋根に時折着地しては、またぴょんぴょんと軽々しく空へと跳ねていく。