千景くんは魔法使い


なんで、私って、こんなに走るのも遅いの?

泣きそうになりながら前に進んでいると、地面に転がっていた石につまずいた。

同時に私は勢いよく転んでしまい、その間にも猫は流されていた。

「……う、うう、ごめん、猫ちゃん……っ」

悔しくて泣いていると、誰かにぽんっと頭を撫でられた。

「大丈夫。俺が助けるから」

地面に座り込んでいる私を、風のように追い抜いていったのは――千景くんだった。

私より何倍も速いスピードで、千景くんは走っていく。

小さくなっていく後ろ姿が見えなくなり、しばらくすると、段ボールを抱えた千景くんが戻ってきた。

「はい」

手渡された段ボールを確認すると、(つぶ)らな瞳をしてる猫が元気に「ニャアア!ニャアア!」と鳴いていた。

それを見た瞬間、ふっと肩の力が抜けてまた涙があふれてきた。

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