千景くんは魔法使い
「うわああん、よかった、本当によかった……っ」
千景くんが来てくれなかったら、絶対に猫を助けられなかった。
「本当にありがとう、千景くん」
お礼を言いながら猫を抱き上げると、私の手をすりすりとしてくれた。
それにしても、どうやって助けてくれたんだろう。
だって、千景くんは制服どころか靴も濡れていない。まるで川に入らずに助けたみたいに見える。
「猫はよかったけど、遠山さんはケガしてるよ」
千景くんの視線が、私の膝に向いていた。
「だ、大丈夫だよ。あとで大きめの絆創膏貼っておくから」
「でも、これ絶対にお風呂で滲みるやつだよ」
「う……」
た、たしかに、思いきり転んでしまったから、膝は血と一緒に赤く擦りむいていた。
「遠山さんって、おっちょこちょいだよね」
千景くんが私と視線を合わせるようにして、しゃがみ込む。
「でも、一生懸命でいいと思うよ」
千景くんは目を細めてにこりとした。