千景くんは魔法使い



……え、どういうこと?

私と千景くんは顔を見合わせる。その男の子は独り言というより、カラスと普通に会話をしてるように見える。

どういう関係なのかはわからないけれど、あまり仲が良くないようで、ぶつぶつと文句を言いながら、男の子はカラスとどこかへ行ってしまった。


「今のって……」

「俺と同じ魔法使いかもね」

私が言おうとしたことを先に千景くんが言った。


「心が魔法を芽生えさせるなら、俺と同じように挫折したり、孤独を知ったり、うまく前を向けずに魔法使いになった人が他にもいるかもしれない」

「うん、そうだね。私もそう思うよ」


魔法は遠いものではない。 

誰の心にも生まれる可能性があるもの。もちろん、私の中にも眠っていることなのかもしれない。


「でも、俺はきっともう魔法使いになることはないよ。花奈がいるから」 

千景くんがにこりと笑う。

あの空のデートから、千景くんは本当に魔法が使えなくなった。

今ではもう、どんなふうに使っていたのか、わからないそうだ。

「さっきの人がどんな悩みを持っているかわからないけど、俺みたい大切な人に出逢えたらいいなって思うよ」 

「 うん、そうだね!」

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