千景くんは魔法使い


孤独は自分ひとりでは埋められない。

立ち止まってしまった足もまた、誰かに背中を押してもらうことで、少しずつ前に進めるようになる。 

私も千景くんに出逢って、それを知った。

だから、迷ってる人がいるのなら、私たちのように知ってほしい。 

この世界には、自分のことを好きだと言ってくれる人がいる。

それで、自分のことも好きになれる日が必ず訪れる。

誰だって、かけがえのない人に出逢える瞬間が、きっと必ずあるはずだから。 
  

「行こう、花奈」

「うん!」

私と千景くんは、固く手を握り合う。  

足並みを揃えて歩く足。その一歩は、明るい未来へと続いているのだろう。


魔法使いの千景くんはもういない。

けれど、私はこの先も、ずっとずっと――
恋という千景くんの魔法にかけられていく。

< 148 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop