そして、次の世界へ。
「いってきます!」

明るい声で言ったけれど、
内心では学校なんて
行きたくないと思っていた。

自転車のペダルに
ぐいと体重をかける。

「今日こそは、きっと。」

小さく呟くのは、
何度も言っている言葉。

今日こそは、きっと。

そうやって自分を自分で
励まして自転車を漕いでいく。

学校には思ったよりも
早く着いてしまった。

自転車を駐輪場にとめて、
私はそのまま教室へと向かった。

教室が見えてくる。

そこで、私の足はぴたりと止まった。

動かしたくても、動かせない。

喉がつっかえたように声も出せない。




それが私が抱える、
場面緘黙症という病気だ。
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