セレナーデ ~智之

よちよち歩きの 絵里加は 少しずつ 言葉を覚えていく。

可愛い声で  “ パパ ” “ ママ ” と言い

『ひろさわ えりかちゃん』

と呼ぶと “ はーい ” と手を上げる。


食事が 上手に食べられるようになり お誕生日前に 断乳もできた。
 

「まだ 生理が来ないの。断乳して もう2カ月経つのに。」

麻有子は 心配そうな顔で言う。
 
「大丈夫だと思うけど 心配なら 一度 病院に行ってみようよ。案外 妊娠していたりして。」

不安そうな麻有子を 元気付けるつもりで 智之が言うと

「やだ、智くん。」

と照れた笑顔で言った直後 麻有子は はっとした顔をする。
 

「どうしたの?」

智之が聞くと、
 
「最近 少し 胃がムカムカして。夏バテかと 思っていたけど。」

と麻有子は 少し、決まり悪そうに言う。
 

「もしかして 本当に 赤ちゃん できたかも。」

智之は こぼれる笑顔で言う。
 
「そうなのかな。」

今度は 別の不安で 智之を 見つめる麻有子。
 

「できていたらいいね。絵里ちゃんと 二才違いだから。丁度いいよ。」

智之の 前向きな言葉に やっと麻有子は 笑顔になり
 
「明日 検査薬 買ってきてみる。」と言う。
 





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