セレナーデ ~智之

「絵里ちゃん いつもご機嫌で 全然 愚図らないのね。本当に良い子だわ。」

父の膝の上で あやす樹と翔に ケラケラと 声を立てて笑う絵里加。

子供達の笑い声は みんなを 幸せな気持ちにする。

母が 笑顔で言うと、
 

「麻有ちゃんが すごく きちんと子育てしているから。」

義姉は 感心した顔で 麻有子を見て言った。
 

生活が 絵里加のペースに なっていく智之と麻有子。

二人は それも 幸せだった。


麻有子は 絵里加の 要求を満たすことを 最優先にしていた。

いつも 根気強く 手を抜かずに 絵里加に接していた。


少しずつ 理解を深める絵里加は 

大きな愛情に 包まれている安心で 

穏やかな 安定した性格に なっていく。


麻有子は いつも笑顔で 絵里加に 話しかけていたから。
 

「違うんです。私 要領が悪いから。上手に 手抜きができなくて。」

謙遜して言う 麻有子に、
 
「逆に 要領が良いわよ。いつも綺麗にしていて 家も ちゃんと片付いているし。その上、絵里ちゃんを 丁寧に育てているのよ。麻有ちゃん ちゃんと休んでいる?」

義姉が 更に麻有子を褒めると。
 

「智くんが 協力してくれるから。帰ってからは ずっと 絵里ちゃんの面倒を みてくれるし。すごく助かるんです。」

と麻有子は 照れたように言う。
 

「なんだ、また智之の のろ気か。」

と父に笑われて 智之も 照れた笑顔になる。
 

「絵里加 本当に可愛くて。顔見ただけで 疲れが取れるんだ。」

智之の言葉に 兄も 頷いて言う。
 
「そうだね。子供の声 うるさいって 思わないよね。不思議だよ。」
 
「それが親なんだよ。」

父が 笑いながら言い 母が頷く。


我が子が これほど 可愛いのだから

両親が 同じ愛を 智之達に注いだことを 理解できる。

だから 今の俺がいる。

今の 幸せで 満ち足りた生活がある。


自分を 健全に育ててくれた両親に 智之は 心の底から 感謝していた。
 
 




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