愛は惜しみなく与う⑤
少し驚いた顔をした杏ちゃん。
そうだよね。意味わかんないよね
母親だなんて、気持ち悪いよね


友達でも女の子でも埋まらない寂しさ

家族になってくれた泉達がいても、なお寂しかった訳は


母親の温もりに飢えていたんだ


恥ずかしくて死にたくなる。杏ちゃん、好きだよ。杏ちゃんの太陽みたいにみんなを照らして、包み込んでくれる優しさが


心の穴を埋めてくれたのは、そういう杏ちゃんの優しさなんだ


「寂しさが埋まって、俺は…杏ちゃんのことが好きなんだなって思った」


これが、人を好きになるっていうことなんだって思った。
杏ちゃんを一人の女の子として好きなんだと思い込んでいた。
勿論大好きだよ。大好きだけど…


けど違った
泉や朔が向ける目とは違ったんだ
杏ちゃんを愛おしそうに見る目。

俺は杏ちゃんに愛を与えるというよりも、愛を貰おうとしていた


分かったんだ、最近



「きっと俺……好きな子が居るんだ。もう手遅れかもしれないし、今更なんだよって言われるかもしれないけど…

でも、ずっとずっと…好きな子が居るんだ」



今ようやくわかった。
杏ちゃんに対しての特別な感情が、母親の温もりを求めるものだとわかった今

もう一つ、モヤモヤして胸に突っかえてた気持ちが…



このモヤモヤが恋なんだって



この瞬間に初めて自分の気持ちが分かった



本当に好きな子がいたことに
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