愛は惜しみなく与う⑤


最後まで聞けなかった
聞いてられるはずがないんだ


どうしてそんな事ができるんだ

どうして杏をそこまで追い詰める


手が怒りからか、震える。

岩見の首元に手をやれば、殺せてしまう。こいつに何かをしても何も変わらないのは分かってる

けど…


くそ


「泉?」


異様な空気を心配したのか、近くに杏が来てしまう。聞こえてなかっただろうか


傷つけていないだろうか


「どうしたん?力入れたらアカンよ?」


岩見の首に手を添えている俺の腕に、不安そうに杏は触れた    

どうしてあげたらいいんだ

どうしたら救ってやれるんだろう


「ごめん、大丈夫だから」


そう言うのが精一杯だった


「……なんかおかしいで?」


おかしいよな。そう見えるよな。動揺しちゃダメだ


「朔達のところ行っといて。少し岩見と話すことがあるから」

「……うん。わかった」


渋々だが頷き、黒蛇の残りを倒し終えて待っている朔の元へ、杏は戻った

ふぅ


「ややこしそうな女だったんですね」

「ややこしくなんかない。杏は何も悪くないんだから」


立ち上がり、地面に転がる岩見も立たせる
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