愛は惜しみなく与う⑤
奥さんを巻き込んで話させるのは卑怯だと思う。でも仕方がないんだ。そうでもしなきゃ、この人は絶対に話してくれないから


「ねぇ、どうして黙るの?泉くんは組長さんの息子さんでしょ?あなたも…大事にしていたんでしょ?あなたに何かできるんでしょ?」


奥さんは俺の方へ来て、肩に手をトンと乗せて大丈夫?と尋ねてきた

大丈夫ではない。今にも泣きそうだから


それでもハザマさんは黙り込んで話さない



「あなた!!!事情は知らないけど、杏ちゃんって子を助けたいって…あなたを頼ってるのよ?ただ事じゃ…ない雰囲気よ?」


さっきまでとは違い、真面目な感じで話す奥さんは、ハザマさんに話しかける

それにも答えない



「お前には関係ない。朱里をつれて、寝室行ってろ」


ハザマさんは口を開いたかと思えば、奥さんにそう言って、ベビーベッドで眠る赤ん坊を見た

さっさとしろ


と追い討ちをかけるように言うハザマさん

その顔は組にいる時のような、怖い顔になる


奥さんに怖い思いをさせてしまった。ごめんなさいと謝ろうとした時、俺の後ろにいた奥さんが動いた


え?


そう思った時には、ガッシャンと大きな音が鳴る


え?

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