愛は惜しみなく与う⑤
「今から…杏が悲しむ話をする。でもこの話はどうしても必要なんだ。泣いていいから。全部受け止めるから。だから…

俺を信じて。必ずここから連れ出すから」



力強く抱きしめられて
あたしの顔にかかる髪を掻き分けた泉は、真剣な目をしていた


頭は一日中おかしなくらい混乱してる

もう、思考をやめてしまうほどに


首元でキラリと光るネックレスをボーッと眺めているうちに、段々視界がぼやけて行った

涙が止まらなかった



泉の言う通り…悲しかった


訳がわからなくて


あたしが思ってたよりも、複雑…



そしてあたしのあの日の決意なんて


簡単にへし折ってくるような内容やった



それを泉は、何度もごめんなと言いながらあたしに伝えた



泉は悪くなんかないのにな
巻き込んでしまってるだけやのにな



泉の好きなところは、あたしが嫌がるような内容でも、傷つくような内容でも…


あたしが知らなきゃいけないと思ったことは伝えてくれるところ。


あたしは泉のそういう処が大好きや




ありがとう


一緒に泣いてくれてありがとう



あぁ


あたしはずっとずっと

騙されてたんやな



大事やと思っていた妹に
世界で1番嫌いなサトルに



最悪な運命へのカウントダウンが始まった

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