愛は惜しみなく与う⑤
「俺…女性が苦手でして。接客は迷惑かけるかなと思ってて…」
安達さんはジーっと俺を見た後に言った
『……店長、俺がこいつの面接する。いいか?』
『え?あぁ、勿論いいけど…』
『ってことで、開店準備だけしといて下さい』
『え?え?そうだね、してくるよ』
店長に指示できる、この人は何者だ?えらいさん?店長は言われた通り、店の開店準備を始める
俺は机にポツンと取り残された
そして目の前にドカンと座った厨房の男
えっと、なんか、やっぱり威圧感がすごいよ…
『ここによく来るのか?』
「はい。この店ができてから、来てます」
『なんで厨房だ?女性が苦手だったとしても、他にもっとバイトあるだろ』
「……料理を。料理を最近よくするんです。この歳になって一度もしたことなくて、最初は見てるだけだったんです。
けど…少しずつ簡単なものを作るようになって、それを食べてもらって、美味しいって言ってもらえたんです」
理由はほんとうに、誰が聞いても単純
恥ずかしいくらいに単純な理由だけど
杏が言ってくれたんだ
「響の料理は幸せになる味やなって、言ってくれた人がいて」