2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






『…今度こそアナタに幸せになってもらいたいから、ですかね』

「…」



優しくも切なげな神様の声。
神様なのにどこか人間味のあるその声が出した答えに私の胸にあったモヤモヤがスッと消えた。


神様にとって今の私の疑問に答えることも、シナリオの歪みがない限り私が独りになることはないことも、私に伝える必要のないことだ。

神様の全て、意味がわからないとずっと思っていた言動の理由の答えが今日やっと出た気がした。



神様なのに、たった1人の人間の幸せを願う理由はわからないが。



『…本来なら幸せになるはずのアナタから笑顔が奪われ、独りになり、死んでいく姿に情が移ってしまったんです。神様失格ですね。ですが、それだけアナタの1度目の人生は痛々しいものでした』

「…」


神様が私の心の中の疑問に答える。


そうだったのか。



『アナタは決して独りにはならない。そして神である私が味方なのです。アナタは何も恐れる必要はないのですよ』
 


優しい優しい神様の声。
まるで聞き分けの悪い子どもに優しく諭すようなその声が私の心の中へスッと入っていく。

神様の優しさを声だけでも感じられる。



私は独りにはならないらしい。
あの辛かった1度目はシナリオの歪みだったようだ。


信じられない話だが神様が言うのだからそうなのだろう。


1度目の孤独を知っていたからこそ、2度目の、今の私は〝彼ら〟の想いをどうして受け取りたくなかった。

また裏切られることが怖かった。


だけどそれがシナリオの歪みだというのなら。
そんな未来は来ないはずだというのなら。


私はまた彼らを信じられる。
想いを受け止められる。



『そう、彼らの想いをどうか信じてくださいね、紅』

「うん」



神様の満足そうな声に私は静かに頷いた。


何も信じられなかった、信じたくなかった私が変わった瞬間だった。










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