2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
side蒼
「ご馳走様!」
パン!と勢いよく両手を合わせて紅が声を上げた。その顔は未だ赤く、僕を意識していることが見るだけでわかる。
そして皿の上にはまだ朝食が残っていた。
大方この状態に耐えられなくなって逃げようとしているのだろう。何も考えずに。
「まだ朝食残っているけど?」
もういいの?と不思議そうに紅を見れば紅はハッとした表情で僕を見た。
「…もう今日はいい」
食欲より逃げたいが勝ったのか紅は名残惜しそうに残っている朝食を見ながらも気まずそうにそう呟く。
そんなに僕から逃げたいのか。
それほどまでに僕を意識した?
今の紅は葉月家次期当主らしく、平静を装っている。だがしかし頬の熱がどうしても冷め切れていない。ほんのり赤いまま。
「それじゃ」
「あぁ、うん。実戦大会期待してるよ」
「ありがとう」
逃げるように去る紅と軽く言葉を交わす。
食堂から出ていく紅の背中を眺めながらここ最近の紅のことを考える。
紅の様子が明らかにおかしい。
どのくらいからおかしいのかはっきりとした日にちは言えないがだいたい1週間ぐらい前からだろうか。
あんなにも誰にも感情を見せずに完璧に立ち回っていた紅が妙に人間らしく、幼い頃に戻ったようなのだ。
どう表現したらよいのかわからないがとにかく今まで感じられなかった人間味が明らかに増していた。