パンデミック.新形コロナウイルス
手術を受ける直前、胸のなかに広がる言いようのない恐怖を抑えきれず、私は何度も同じ問いを投げかけていた。
「もし、このまま麻酔から覚めなかったら、僕はどうなってしまうんだろう」
その不安にすがるように、ニコルへと繰り返し尋ねた。彼女は困ったような、けれどどこか呆れたような笑みを浮かべ、こう言って優しくなだめた。
「事前の検査で麻酔に弱い体質じゃないって分かっているんだから、大丈夫だよ」
そう告げられて会話は終わるはずなのに、恐怖に囚われた心は納得してくれない。だからこそ、私は何度も同じ言葉を口にし続けた。ニコルは「また同じこと聞いて」と、まるで子供をあやすように小さく笑う。
あのとき、白い天井の下で交わした何気ないやり取り。その笑い声の裏側に隠された、命の境界線に怯える少年の切なさと、たったひとりの温もりに縋りつこうとする衝動だけが、麻酔の霧の向こう側にいまも鮮やかに焼き付いている。
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