パンデミック.新形コロナウイルス
病室の静けさを切り裂くように、病院の緊迫した直通電話がけたたましく鳴り響いた。
「――こちら救急救命室! 交通事故の負傷者、2名を搬送します!」
電話の向こうの緊迫した声の主が告げた名前を聞いて、私たちは息を呑んだ。
運ばれてくるのは、あの悪質な煽り運転と事件の被害に遭った、桜坂高校の少女・遥(はるか)とその母親だった。
加害者の男は、逃げ切る間もなく警察に身柄を拘束され、今頃は冷たい取り調べ室の中で鉄格子行きの切符を数えさせられている。だが、被害者たちが負った傷の代償は、あまりにも大きすぎた。
サイレンの音とともに病院へ到着した2人は、すぐさま地下の緊急手術室へと運び込まれた。
懸命の救命処置の末、遥は足の激しい骨折と全身の打撲で済んだものの、命の危機からは逃れることができた。しかし、母親のほうは違った。激しい衝撃によって脳の血管が致命的な損傷を受けており、医師たちが総出であらゆる手段を尽くして手術を行ったが、その祈りは届かなかった。
母親は、そのまま帰らぬ人となった。
命を取り留めた遥が目を覚ましたとき、待ち受けているのは、最愛の母を理不尽に奪われたという残酷すぎる現実だった。あの男の身勝手な凶行が、どれだけの温かな家族の未来を叩き潰したのか。
地下の静まり返った病棟に、遥の耐えきれない泣き声が小さく響く。
私たちは言葉を失い、ただ目の前で起きた取り返しのつかない悲劇の重さに、震える彼女の背中にそっと手を伸ばすことしかできなかった。
「――こちら救急救命室! 交通事故の負傷者、2名を搬送します!」
電話の向こうの緊迫した声の主が告げた名前を聞いて、私たちは息を呑んだ。
運ばれてくるのは、あの悪質な煽り運転と事件の被害に遭った、桜坂高校の少女・遥(はるか)とその母親だった。
加害者の男は、逃げ切る間もなく警察に身柄を拘束され、今頃は冷たい取り調べ室の中で鉄格子行きの切符を数えさせられている。だが、被害者たちが負った傷の代償は、あまりにも大きすぎた。
サイレンの音とともに病院へ到着した2人は、すぐさま地下の緊急手術室へと運び込まれた。
懸命の救命処置の末、遥は足の激しい骨折と全身の打撲で済んだものの、命の危機からは逃れることができた。しかし、母親のほうは違った。激しい衝撃によって脳の血管が致命的な損傷を受けており、医師たちが総出であらゆる手段を尽くして手術を行ったが、その祈りは届かなかった。
母親は、そのまま帰らぬ人となった。
命を取り留めた遥が目を覚ましたとき、待ち受けているのは、最愛の母を理不尽に奪われたという残酷すぎる現実だった。あの男の身勝手な凶行が、どれだけの温かな家族の未来を叩き潰したのか。
地下の静まり返った病棟に、遥の耐えきれない泣き声が小さく響く。
私たちは言葉を失い、ただ目の前で起きた取り返しのつかない悲劇の重さに、震える彼女の背中にそっと手を伸ばすことしかできなかった。