パンデミック.新形コロナウイルス
しかし、ここで病院側にとって極めて深刻な現実的な問題が立ち塞がった。
加害者の男が加入していたのは最低限の自賠責保険(強制保険)のみで、任意保険には一切入っていない。しかも、男自身は多額の賠償金を抱えて刑務所行きとなり、一文無しだ。自賠責の限度額や加害者からの賠償金が全く見込めないとなれば、事故の被害者である遥たちの莫大な治療費や手術費用は、病院側としても公的な診療報酬として回収できなくなってしまう。
遥自身はまだ高校生で、自分でお金など持っていない。
病院側は藁をもすがる思いで遥の親戚へと連絡を取り、治療費や今後のことについて相談を持ちかけたが、返ってきたのは冷酷な言葉だった。
「あんな子のために、こっちがなんでお金を払わなきゃいけないんだ」
「関わりたくない勝手にしてくれ」
親戚たちは責任を押し付け合うように逃げ出し、遥はたった一人の母親を理不尽に奪われた上に、親族からも見捨てられて完全に孤立してしまったのだ。
加害者は無責任に逃げ、保険もお金もなく、親戚にも見放された被害者――。
このままでは、懸命に命を救った病院側が巨額の医療費の未払いを抱え、経営を圧迫されてしまう。この理不尽な状況を打開するため、病院は奔走し、最終的に生活保護の申請を行うことでどうにか医療費の補填と遥の生活の立て直しを図ることになった。
このような悲惨な事故の被害者が、加害者の無資力や無保険、さらには行政や法制度の隙間に挟まって救われず、医療機関側も大きな赤字を抱え込んでしまうという問題は、現代社会において決して絵空事ではなく、実際に数多く起きている深刻な社会問題そのものだった。
加害者の男が加入していたのは最低限の自賠責保険(強制保険)のみで、任意保険には一切入っていない。しかも、男自身は多額の賠償金を抱えて刑務所行きとなり、一文無しだ。自賠責の限度額や加害者からの賠償金が全く見込めないとなれば、事故の被害者である遥たちの莫大な治療費や手術費用は、病院側としても公的な診療報酬として回収できなくなってしまう。
遥自身はまだ高校生で、自分でお金など持っていない。
病院側は藁をもすがる思いで遥の親戚へと連絡を取り、治療費や今後のことについて相談を持ちかけたが、返ってきたのは冷酷な言葉だった。
「あんな子のために、こっちがなんでお金を払わなきゃいけないんだ」
「関わりたくない勝手にしてくれ」
親戚たちは責任を押し付け合うように逃げ出し、遥はたった一人の母親を理不尽に奪われた上に、親族からも見捨てられて完全に孤立してしまったのだ。
加害者は無責任に逃げ、保険もお金もなく、親戚にも見放された被害者――。
このままでは、懸命に命を救った病院側が巨額の医療費の未払いを抱え、経営を圧迫されてしまう。この理不尽な状況を打開するため、病院は奔走し、最終的に生活保護の申請を行うことでどうにか医療費の補填と遥の生活の立て直しを図ることになった。
このような悲惨な事故の被害者が、加害者の無資力や無保険、さらには行政や法制度の隙間に挟まって救われず、医療機関側も大きな赤字を抱え込んでしまうという問題は、現代社会において決して絵空事ではなく、実際に数多く起きている深刻な社会問題そのものだった。