パンデミック.新形コロナウイルス
翌日、遥は完全に麻酔から覚醒した。
心身に深い傷を負った彼女を支えるため、この病院の理学療法士である正(まさお)がその身体のリハビリを担当し、その妻であり心理カウンセラーである茜が心のケアに寄り添うことになった。夫婦二人三脚での手厚いサポート体制が組まれたものの、私たちにはそれ以上に、どうしようもなく重い課題が残されていた。
「お母さんが亡くなったこと……これを、どうやって遥ちゃんに伝えるべきか」
南ちゃん、ニコル、茜、そして僕の4人は、深刻な表情で話し合いを重ねていた。
麻酔が完全に覚めてから2日ほどが経てば、遥は必ず「お母さんはどこ?」「いつ会えるの?」と聞いてくるだろう。その時が来たとき、どうやって真実を告げるべきか。
「隠し通すなんて無理だよ。いつかは絶対に気づかれてしまう。聞かれたときには正直に話そう。これまで隠していたことも、ちゃんと謝ろう」
僕がそう苦渋の決断を告げると、ニコルたちは静かにうなずき、明りも涙を浮かべて「……うん、それしかないよね」と言ってポロポロと泣いた。あまりにも辛すぎる決断だった。
けれど、その悲しみに沈む空気の中で、明りはふっと顔を上げ、驚くほど力強い声でこう言ったのだ。
「だったらさ……遥ちゃんも、私たちと一緒にこの病院にずっと住んでもらえばいいよ。当面の治療が終わるまでの間は、この院内学級に通ってもらえばいいんだし。それに、もし退院することになっても、帰る場所なんてない子だっていっぱいいるでしょ?」
明りは少し間を置くと、真剣な瞳で続けた。
「あの、レントゲンの先生が前、壁にうっかり大きな穴を開けちゃった事件があったでしょ? あの壁の穴から、隣の桜坂高校へと繋がる秘密の通路ができているんだからさ、遥ちゃんだってそこから学校に通えばいいじゃない!」
その言葉を聞いた瞬間、私たちはハッと息を呑んだ。
自分の痛みや不安でいっぱいはずなのに、明りは誰よりも心が優しく、驚くような素晴らしい提案をしてくれたのだ。
「……明りちゃん、すごいよ。そんなこと思いつくなんて……本当に偉いね」
南ちゃんやニコルちゃんは、愛おしそうに明りの頭を優しく撫で、その慈悲深い優しさを心から褒め称えた。冷え切った世の中のルールなんて関係ない。この病院には、誰一人見捨てない、本物の温かな人間愛が満ちていた。
心身に深い傷を負った彼女を支えるため、この病院の理学療法士である正(まさお)がその身体のリハビリを担当し、その妻であり心理カウンセラーである茜が心のケアに寄り添うことになった。夫婦二人三脚での手厚いサポート体制が組まれたものの、私たちにはそれ以上に、どうしようもなく重い課題が残されていた。
「お母さんが亡くなったこと……これを、どうやって遥ちゃんに伝えるべきか」
南ちゃん、ニコル、茜、そして僕の4人は、深刻な表情で話し合いを重ねていた。
麻酔が完全に覚めてから2日ほどが経てば、遥は必ず「お母さんはどこ?」「いつ会えるの?」と聞いてくるだろう。その時が来たとき、どうやって真実を告げるべきか。
「隠し通すなんて無理だよ。いつかは絶対に気づかれてしまう。聞かれたときには正直に話そう。これまで隠していたことも、ちゃんと謝ろう」
僕がそう苦渋の決断を告げると、ニコルたちは静かにうなずき、明りも涙を浮かべて「……うん、それしかないよね」と言ってポロポロと泣いた。あまりにも辛すぎる決断だった。
けれど、その悲しみに沈む空気の中で、明りはふっと顔を上げ、驚くほど力強い声でこう言ったのだ。
「だったらさ……遥ちゃんも、私たちと一緒にこの病院にずっと住んでもらえばいいよ。当面の治療が終わるまでの間は、この院内学級に通ってもらえばいいんだし。それに、もし退院することになっても、帰る場所なんてない子だっていっぱいいるでしょ?」
明りは少し間を置くと、真剣な瞳で続けた。
「あの、レントゲンの先生が前、壁にうっかり大きな穴を開けちゃった事件があったでしょ? あの壁の穴から、隣の桜坂高校へと繋がる秘密の通路ができているんだからさ、遥ちゃんだってそこから学校に通えばいいじゃない!」
その言葉を聞いた瞬間、私たちはハッと息を呑んだ。
自分の痛みや不安でいっぱいはずなのに、明りは誰よりも心が優しく、驚くような素晴らしい提案をしてくれたのだ。
「……明りちゃん、すごいよ。そんなこと思いつくなんて……本当に偉いね」
南ちゃんやニコルちゃんは、愛おしそうに明りの頭を優しく撫で、その慈悲深い優しさを心から褒め称えた。冷え切った世の中のルールなんて関係ない。この病院には、誰一人見捨てない、本物の温かな人間愛が満ちていた。