パンデミック.新形コロナウイルス
リハビリのひと区切りがついたその日、無神経でどこか調子のいいレントゲンの先生が、ひょっこりと病室に顔を出した。
「やあ、何泊目だっけ? まあ、骨折の治療も順調だし、レントゲン写真を見る限り骨はしっかりくっついてる。異常なし、完璧だね!」
先生はカラリと明るい笑顔を浮かべると、親指を立てて見せた。
「よし、この調子でリハビリも頑張ってよ!」
そして、気さくにそう言い放った後、先生はまるで大発見でもしたかのように、ニヤリと悪びれもなくこう続けたのだ。
「そういえばさ、君、これから隣の桜坂高校に通うんだって? いやあ、前さ、僕がうっかり壁にぶつかって開けちゃったあのデッカイ穴、さっそく役に立ってるじゃないか! あの抜け穴、なかなか良い仕事したろ?」
病院の壁を破壊した張本人が、まるで自分の手柄かのように得意げに笑う。普通なら怒り出してもおかしくないような、あまりにもデリカシーのない発言だった。
けれど――。
その言葉を聞いた瞬間、遥は驚いたように目を見張り、それからこらえきれなくなったように声を上げて大笑いした。
「なんだそれ……! 変な穴だなあって思ってたけど、そんな理由だったんですか!」
思いがけないユーモアと、どこか間抜けな先生の態度のおかげで、病室をずっと覆っていた冷たく重苦しい空気が、まるで嘘のようにふわりと軽くなった。
心に深い傷を負った遥の顔に、その日初めて、曇りのない心からの笑顔が咲いた瞬間だった。
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