パンデミック.新形コロナウイルス
その秋、病室の静けさは、僕たちの歓声と温かな熱気にかき消されていた。
「国家試験、受かってよかったね」
あかりがそう言って微笑んでくれたあの日の喜びを分かち合った勢いのまま、僕たちはその場で、いや、この病院の中で、誰にも真似できない特別な結婚式を挙げることになった。
世間の人間が教会や式場で挙げるような、形式ばったお洒落な結婚式なんかじゃない。消毒液の匂いが漂い、夜の闇が窓の外に広がるこの病室こそが、僕たちにとっての最高の聖堂だった。
式が始まると、僕たちは声を合わせて賛美歌を歌った。
上手な合唱なんかじゃない。音程が外れても、声が裏返っても関係なかった。ただ生きていること、そして僕たちがこうして結ばれたことへの衝動をぶつけ合うように、みんなで必死になって喜びの歌声を響かせた。
そこには、僕たちの絆をずっと見守ってくれた顔ぶれが揃っていた。
あかりの傍らに寄り添い、自分のことのように喜んでくれるニコルや南ちゃん。さらに、夏美ちゃんや、レント、そして元気士と付き合っているはるかちゃんまでが駆けつけてくれた。
世間の常識や冷ややかな視点なんて、この瞬間の前では何の意味も持たなかった。
集まったみんながそれぞれの歪みや傷を抱えながらも、この場所だけはお互いの存在を丸ごと肯定し合える。僕たちは皆で肩を寄せ合い、病室が割れんばかりの大きな音で歌を歌い続けた。
外の世界がどれほどドライで、利害関係だけで回っていたとしても関係ない。
この狭い病室の中で、あかりの手をしっかりと握りしめ、みんなの祝福の歌声に包まれながら、僕は人生で最も確かな幸福のなかにいた。
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