パンデミック.新形コロナウイルス
バンドの演奏はさらに熱を帯び、大原櫻子のナンバーや「岬めぐり」、そしてさまざまな名曲が次々と披露されていった。
そしてライブがいよいよフィナーレを迎えようかという時、最後に演奏されたのは手島大ちゃんの「汗の手紙」だった。
しっとりと聴かせるはずの静かなバラードナンバーで、心に染みる名曲のはずだった。しかし、あの「大原櫻子の2番のちゃっちゃっちゃしか弾けず、レコード会社に喧嘩を売った男」が、ここぞとばかりにステージの真ん中に陣取っていた。
曲が一番静まり返る情緒的なパートに入った瞬間、男は待っていましたとばかりに、歪ませたエレキギターで「ジャキイイーン!」と場違いなほど激しい音を鳴らした。
あまりにも空気の読めない、しかし圧倒的な熱量を感じさせるその暴挙に、僕は思わず吹き出してしまった。
「おい、この曲のどこでそれ入れるんだよ……!」
隣を見ると、あかりも腹を抱えてくすくす笑っていた。
僕が「おいおい、ここでそんなギターが入るのって、ちょっと合わなくねえか?」と突っ込むと、男は汗だくの顔でギターをかき鳴らしながら、満面の笑みでこう言い放った。
「うるせえ! 俺は今、ギターが弾きてえんだよ!!」
その堂々とした開き直りに、周囲にいたみんなも大笑いした。夜の砂浜と星空の下、不格好で最高に愛おしい音楽が、波の音とともにどこまでも響き渡っていった。
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